kさんからご指名入りました、tokiです。
名言、うーむ、じゃあ、好きな映画から好きな台詞を引用します。
テーマは、青春です。でも甘酸っぱくないです、もっとビターな。
名言011:「九条、俺も連れてってくれよ、な」
映画「青い春」。
10年以上前の映画。主演の九条(松田龍平)は当時18歳。上は、もう1人の主演、青木(新井浩文)の台詞。
この映画、原作はピンポンの松本大洋。
死の匂いが香り立つ、怠惰と暴力のモザイクで彩られた”学園”という名の地獄絵図。
登場人物にとっての青春とは、青ざめた桜が散る鈍色の光。決して、暖色に満ちていない。
ある日、九条はこの”学園”を、”屋上ゲーム”で勝利したことで、番となり、仕切ることになる。
屋上ゲームとは、屋上のてすりに捕まり、そのまま手を離して体重を後ろに放ったまま”拍手”の回数を競う死亡遊戯である。
ひとつ、ふたつとかけごえを合わせ、次第に回数を重ね、死が背中にべっとりと張り付くまで度胸を試す。
ギブアップするまで続く、いわばチキンレースである。
繰り返す不良行為のなかで生を見失った彼らを奮わせる、唯一のゲームだった。
いや、ループともいえるこの日常を終わらせる解答だったのかもしれない。
九条は、このゲームで8回という校内記録をうちたてる。
しかし、九条にとってそんなことはどうでもいいことだった。
九条を頭とした不良たちは、結局、再び終わることの無い暴力の世界にくるまれる。
後輩の台頭。他校の襲撃。大人という圧倒的な抑圧。
廊下には低俗な落書きと、トルエンの煙がまき散らされている。
覚束ないクラシックギターの乾いた音色がそれに拍車をかけている。
しかし、九条にとってやはりどうでもいいことだった。
九条は、この”青春”に嫌気がさしていた。
未来もない、現在も、またないがしろにされている。
”俺たち、いつまでこんなことしているんだ?”
外の世界がまぶしい。
気に入らないのは、青木だった。
青木は九条の右腕のような存在だった。
しかし学園の”外”が見えるほど想像力のない彼は、やる気のない九条をいつも鼓舞し、不良を懸命にこなしてた。
”これじゃ後輩に示しがつかねえよ”
”青木ちゃんは熱いねえ…”
二人には、少しずつ溝が生まれた。
九条が不良をぱたりとやめ、”普通の若者”となるのに時間はかからなかった。
このどうしようもない青春からふらりとすり抜けた九条。
そこから抜け出せない青木。
”九条にできないことを、やってやるよ”
ついに、亀裂がはいった。
青木はひとり、屋上へのぼる。
”ひとーつ、ふたーつ”
誰もいない屋上から声が聞こえる。
黒く顔を塗りたくった青木の顔は、まさに死神にとりつかれた何かだった。
そうして孤独な屋上ゲームがはじまった。
”みーっつ、よーつ、いつーつ、むーっつ”
青木はひとり、空を仰ぐ。
ジェット機が低空飛行し、いまにも自分をかすめとろうとしている。
”そういや、俺の夢、パイロットだっけ…”
”やーっつ、ここのーっつ”
「…九条、俺も連れてってくれよ、な」
気付いた九条は、屋上へとかけつける。
時よ、止まってくれ。
間に合ってくれ。
「青木!!」
青木は、13回、叩ききった。
そして空しく、地面へおちていく。
”俺、青木っていうんだ、よろしくな、九条”
小学生のとき。
そう、出会いはそうだった。
人間は、永遠じゃない。
無惨に死んだ青木を屋上から見つめて、力がぬけた。
季節はずれの雪が、二人の影に注いでいた。
…はい、こんなかんじで!
指名はーうーん、っと、ふかいさんで!(誰でもいいのですよね?)
最近のコメント