無茶ブリ3行リレー劇場ゲームルール:
①無茶ブられた人は、最低3行以上の小説を無茶ブリした人の話に引き続き書く。
(更新日は日曜日)
②無茶ブられた人は、その週の話に関連する写真を1枚小説と共に掲載する。
③無茶ブリの対象は、1回でも上海ゲーム部HPに投稿した事のある人を選ぶ。
④無茶ブリの対象は連続で同じ人物を指名してはならない。最低中2週開ける事。
⑤作風は人それぞれ自由。
⑥1作品、10話目で絶対に完結させなければならない。
第九話 【箱】
-この戦いは負けられない。
本能がそう叫んでいる。
たかがカードゲームと侮っていたが、
このiPhone5sには選択した武将へのダメージが自分へも反映される
DFBS(ダイレクトフィードバックシステム)が搭載されているらしい。
今回はアザ程度で済んだが、
これ以上ダメージを受け続けると命そのものが危ない。
・・・なんつー設定だ、夢なら覚めてくれ。
しかしこの痛みは現実のものとしか思えない。
数えきれない矢が放たれたビジョンが蘇ってきて背筋に冷たいものが走った。
目の前に置かれた関羽のカード。
そして、気がつけば更にその前には
自分と同じ場所に傷を負った関羽が立っていた。
カウンターは戸惑いをよそに着々と減っていく。
やるしか、ないのか・・・
そう思い直し、覚悟を決める。
残り時間、3425秒
一回大きく深呼吸すると心なしか頭がすっきりした。
状況を整理しよう。
主公は「曹繰」。
自分は反賊である「関羽」。
他は「劉備」「周瑜」「張遼」「甄姫」
これが既存ルール通りであれば、
少なくとも忠臣、内奸が一人ずつ、
そして反賊がもう一人は居るのだろう。
これまでの流れと、この状況が史実をなぞっているのだとしたら、
場に出ている武将カードの顔ぶれから3対3形式では無い事は察しがつく。
ゲームなら自分のライフが0になっても
他の反賊役が主公を倒すことができれば勝利条件を満たすことが出来る。
しかし・・・
ダメージがプレイヤーにフィードバックされるこの状況。
自分のライフが0になってしまえばタダ事では済まされないだろう。
良くて意識不明か・・・
状況によってはそれで済むかもしれない。
しかし、自分の預かり知らない所で
運命を人任せにする事など出来るはずもない。
己で道を切り開くしか無いのである。
ん、待てよ。
他の武将はどうなんだ?
他の武将の後ろにも
同じようにプレイヤーが存在するのではないか?
なるほど、それなら主公役の曹操が
初めから「万箭斉発(まんせんさいはつ)」を放って来たのも頷ける。
ライフ0で即命を失ってしまうかもしれないこの状況。
つまり、なりふり構っていられないのだ。
それをプレイ開始次点から知っている曹操役は
今回巻き込まれてしまった一件に詳しいのだろう。
何とかしてコンタクトを取りたい。
オンライン版のようにチャット機能はないのか?
iPhone5sを必死に操作している間に曹操のターンが終わった。
結局攻撃は先ほどの一手のみだったようだ。
ダメージを負ったのは曹操と張遼、甄姫を除いた3人である。
なお、甄姫は彼女の固有能力「傾国」で黒の殺を閃として使用した。
魏軍は総じてダメージを負っていないことになる。
まさか、こいつら・・・通じている?
自分がまだiPhone5sの操作方法を熟知していないだけで、
それぞれのプレイヤーが互いにコンタクトが取れるという可能性は
まだ残っている。
ともあれ、次は張遼のターンである。
史実通りに行けば奴が忠臣だが・・・
張遼の動きに目を光らせる。
この武将が持っている能力は確か突襲。
ドローフェイズでカードを引かない代わりに、
任意に他のプレイヤー2人を指名して、
それぞれの手札を1枚ずつ奪い取ることが出来る。
張遼は案の定「突襲」を発動した。
相手は、劉備と周瑜である。
手札の良い自分が選ばれなかったのは幸運と言える。
そして一つの確信が生まれる。
張遼は敵である。
一手のミスが命に関わるこの状況、
一度自分のターンが終わってしまったら次のターンまで
受け身でいるしかない武将能力。
反賊であれば、間違いなく主公の手札からカードを取るはずだ。
味方のふりをするメリットは少ない。
しかし、甄姫でもなく魏軍ではない劉備と周瑜から引いたという事は
忠臣か内奸に違いない。
張遼、いやその後ろの闇で誰かがほくそ笑んだ気がした。
そして場に出されるカード。
名は「南蛮入侵(なんばんにゅうしん)」
先ほどの万箭斉発と同様に全体に1ダメージを与えるカードである。
回避するためには「殺」を出すしか無い。
現在手札には殺が2枚あるので回避は出来る。
だがここで出すべきだろうか?
この一手が運命の分かれ道のような気がする。
他に持っている諸葛連弩をちらりと見やる。
通常、相手にダメージを与えられる殺カードは
自分のターン中に1枚しか出せないが、このカードを装備していれば
「殺」を何枚でも出すことが出来る。
つまり、殺を2枚以上持っていてこそ初めて意味のあるカードと言える。
自分のドローで「殺」を引ける可能性も無くはないが・・・
ここは敢えて受けよう。
頭のなかで意思表示した瞬間、足元でごきんっと今まで聞いたことのない音がして、
直後激しい痛みと共に片足に力が入らなくなり、その場に崩れ落ちる。
確認しなくても分かってる。どうやら折れたらしい。
全く洒落にならない展開だ。
そう毒づきながらも後悔はしていない。
これは肉を切らせて骨を断つための手段なのだ。
・・・いや、骨はもう折れているが。
象が踏んでも大丈夫なのはア○ム筆入れだけだという事だろう。
ともあれ、勾玉一つでは象にまともに踏まれるという事にはならないのか、
片足が使い物にならなくなっただけで済んでいる。
暗闇の中で呻く声が聞こえた気がする。
見ると劉備と周瑜の勾玉が1つずつ減っている。
周瑜は残り1つしか残っていない。
関羽と劉備は残り2つ。
甄姫と曹操はそれぞれ殺を出して回避した。
更に張遼がカードを出す。
「酒」である。
ま、まさか・・・っ!?
悪い予感が的中する。
続けざまに張遼が「殺」を出す。
対象はもちろん、関羽(自分)だ。
もはやこれは疑う余地はない。
茶番である。
避ける手段が自分にはない。
頭がそう理解した瞬間、腕と脇腹に走る衝撃。痛がる猶予すら無い。
体に力が入らなくなり、iPhone5sを手から落とす。
意識が朦朧としてくる。
関羽のカードが剣閃によって切り刻まれ、
暗闇へと消えていくのがかろうじて目で追えた。
こんな所で、俺は死ぬのか?
何も出来ないままで?
嫌だ、そんなの。
理不尽だ。
無念だけが頭に渦巻く。
殆ど嵌められるような形でこの世から退場などと、
割り切れるものではない。
割り切りたくもない。
だけど・・・これが現実なら・・・
意識が段々と暗い闇に閉ざされていく。
そして、何もかも消えてしまう。
その瞬間。
・・・が欲しいか!?
声が聞こえた気がした。
”力”が欲しいか!?
今度ははっきりと聞こえる!
答えなんて、決まっているじゃないかっ!
”力”が欲しいなら・・・
くれてやる!!
瞬間、場を焦がす激しい炎が巻き起こる。
意識が覚醒してくる。
そして燃え盛る炎の中から現れる消えたはずの関羽のカード。
手に取るとカードが先ほどと様相を変えていることに気がついた。
これは無念のまま死んでいった関羽の荒ぶる魂。
この世ならざる存在となった関羽のカードだ。
鬼神が再臨した瞬間である。
隣を見ると、口から血を流した劉備がニヤリと笑っていた。
どうやら桃のカードを使ってくれたらしい。
感謝を目線だけで伝えると、
倒すべき敵を見据える。
張遼のターンが終了していただけで、依然苦しい状況は変わらない。
それでも光明はある。
だから血反吐を吐きながら言った。
「次は俺のターンだ」
残り時間、2125秒
最後のターン:【カタン王の嫁さん】を指名します。
メッセージ:すみませんが、夢オチは無しの方向でお願いしますw m(_ _)m
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