先日、あのやなせたかしさんがお亡くなりになったというニュースが入りました。
やなせたかしさんと言えば、アンパンマンの原作者として日本でこの人を知らないとは言わせないくらいの勢いで有名な方ですね。
94歳で心不全でこの世を去られました。
筆者は母親が友人からもらった大量にダビングされたアンパンマンのビデオテープで幼児期を過ごしました。
おそらく放送開始から92,3年までのアンパンマンの話はだいたい覚えていると思います。
このビデオのおかげで筆者はなぜかしょくぱんまんやカレーパンまん、そしてホラーマンやどんぶりトリオのキャラソンまで歌えるようになりました・・・。
さらに、大学時代2年ほどBS放送でやっていた「それいけ!アンパンマンくらぶ」なる幼児番組(手遊びや歌+アニメ4話の1時間構成)を見ていたから、なぜか幼児期よりアンパンマンに詳しくなったのです。
というわけで、筆者の背景も済んだ所で、アンパンマンについてお話したいと思います。
さて、アンパンマンの原作は「あんぱんまん」という絵本ですが、原作のアンパンマンはアニメで皆が知っているあの丸いかわいいシルエットからは程遠い、わりとリアルなフォルムです。
だいたいの子供が先にアニメのアンパンマンを知っているがために、この原作を読むと8割9割の確率でトラウマになります。
筆者もその一人です・・・。
歯医者の待合室でアンパンマンのアニメを見た後に、ふと本棚を見ると「あんぱんまん」が!
喜んで開いて見ると、まあ、なんというか、幼稚園児にはなかなかヘビーなテイストでした。
どちらかというと、やなせさんがアンパンマンを通して伝えたかったことはこちらに詰まっています。
オープニングテーマのアンパンマンのマーチも、大人になって歌詞を読み返すと感慨深いものがありますね。
アンパンマンを改めて大人になって見てみると、非常にわかりやすい法則が存在することがわかります。
まずひとつに、「キャラクターのモチーフがひと目でわかる」。
アンパンマンならあんぱん、しょくぱんまんならしょくぱん、これも分かりやすいのですが、子供もまだ知らなさそうなものをモチーフにしているキャラクターもきちんと現実にあるものになぞってデザインされています。
ドリアンおうじょ、という中国ではおなじみのドリアンをモチーフにしたキャラクターがいますが、彼女はまんまドリアンの頭部を持っています。
臭いが強烈なあの果物をモチーフとしているだけあって、彼女の性格もなかなか強烈なものです・・・。
その強烈な印象の原因は、声優さんが吹き替えでも有名な江原正士さん(最近だとハリポタのヴォルデ
モートを演じてられます)と、アンパンマンシリーズではめずらしい女性キャラクターを男性が演じていることからも伝わるかと思います・・・。
「じぶんの きにいった ものは なんでも ほしがる、ドリアンおうこくの おうじょ。
とても わがまま。アボガドじいやが うんてんする ばしゃに のっている。」
(公式サイトより引用)
馬車までドリアンとは恐れ入ります・・・絶対すれ違ったら臭いますね。
ざっくりモチーフがひとめでわかると前述してしまいましたが、アンパンマンのキャラクターデザインには「原型維持型」の他に「人間型(擬人化)」「動物型」と大きく分けて三つ存在します。
これらの型がミックスされたキャラクターもいるので、キャラクターの数もどんどん増えていき、この作品の登場キャラクター数は1000を超えています。ギネス認定もされているんですよ。
私の好きななかま。おくらちゃん。天使です。
「おいしい やさいを つくるのが とても じょうず。
ばいきんまんの ことを てつだいを してくれる いい ひとだと おもっている。
やさいを たいせつに おもっていて、やさいと おわかれの ときは いつも なく。」
(公式サイトより引用)
私も最近知ったのですが、どうやらドキンちゃんの妹らしいです。
うそ泣きの達人で、彼女涙がかかると皆涙が止まらなくなるとか。
やなせ先生は食べ物で一通り作りたいとおっしゃっていたそうで、先生の想像力の豊かさがわかりますね。
そして中国でもこのアンパンマンは人気です。
意外にも吹き替え版ではなく、日本語版で見ている子供も多いようです。
私が以前上司の家に遊びに行ったとき、6歳になるお子さんがアンパンマンを見始めました。
日本語版ビデオでこれまた懐かしい「アンパンマンとみずうみひめ」という話でした。(放送はかなり初期だと思います)
ざっくりあらすじを言うと、きれいな湖をばいきんまんが汚してしまい、それに怒った主のみずうみひめ(美女)が湖から出てくるのですが、みずうみひめは力の源である王冠を奪われてしまい、湖最大のピンチ・・・!というところで、確か「やめるんだばいきんまん!」「やだばいき~~ん」というやり取りがあり、あとはお約束のパターンだったと思います。
水は汚してはいけない、人のものを盗ってはいけない、という非常に日本的な話筋が特徴ですが、日本語がわからなくてもギャグシーンを見て、彼女は笑っていました。
わかるんですか?と私が上司に聞くと、「たぶん繰り返し見ているうちにどういうことを話してるかわかると思う」といいました。
上司いわく、「あとはアンパンマンの話はわかりやすい。ばいきんまん悪いことする、そしたらアンパンマンやっつける。でもそれだけじゃないから面白いね」、だそうです。
なるほど、確かにそうです。
アンパンマンの各話サブタイトルは「●●と□□」という非常にシンプルな日本語で構成されているため、新しいキャラクターが出てもどんな名前なのかすぐわかる。
そして話の内容も、
「アンパンマンが悪い奴だとばいきんまんにそそのかされたキャラクターがアンパンマンを襲う」
「ドキンちゃんのわがままでおいしいものを強奪しにきたばいきんまんをアンパンマンが成敗する」
「キャラクター同士が『自分の作る●●(食べ物)の方が美味しい!』と喧嘩して、ばいきんまんも巻き込んでトラブルになる」
この3パターンが多いです。
言語が通じなくてもこれだけパターン化されているアニメだから、おそらく国を越えて人気があるのだと思います。
他に中国でヒットしているアニメを考えると、コナンやドラえもんもある意味パターン化された長寿番組ですよね。
コナンであれば、「コナンが自分の代わりに大人を使って、事件を解決する」。
ドラえもんであれば、「自分の欠点を補おうとしたり、ジャイアンから受けた屈辱を晴らすために、ドラえもんの助力を得る」。
ちなみに、上司の家での一件を親に話すと、「丸いものは人を安心させるから」という非常に明確単純なコメントをいただいました、納得。
話がそれましたが、国を越えて子供たちに笑顔を届ける作品を生み出したやなせさん、生前「俺が死んでも(このアニメは)終わりません。誰かが続けるでしょう。永遠に」とおっしゃっていたそうです。
筆者もやなせさんのお言葉通り、ずっとこの作品が続くことを願っております。
改めて、ご冥福をお祈りいたします。
文章:ゆず
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