無茶ブリ3行リレー劇場ゲームルール:
①無茶ブられた人は、最低3行以上の小説を無茶ブリした人の話に引き続き書く。
(更新日は日曜日)
②無茶ブられた人は、その週の話に関連する写真を1枚小説と共に掲載する。
③無茶ブリの対象は、1回でも上海ゲーム部HPに投稿した事のある人を選ぶ。
④無茶ブリの対象は連続で同じ人物を指名してはならない。最低中2週開ける事。
⑤作風は人それぞれ自由。
⑥1作品、10話目で絶対に完結させなければならない。
最終話 【箱】
「よかった…」
病院の一室で、まだ眠りから覚めない彼の手を取ってそうつぶやいた。
その声は震えていてまるで自分のものではないように聞こえた。
救急患者として運ばれてきた彼は、右足の複雑骨折の手術が済んだばかりだ。
打撲の跡も数ヶ所見られるが内臓には影響がないというのが検査の結果で、一週間以内に退院できるそうだ。
そっと腕を触ってみる。
左腕に刺し傷のようなアザが残っているが、すぐに消えるだろう。
彼のぬくもりを感じる。
彼は生きている。
「よかった」
わたしは再び声に出した。
今度は、はっきりと。
そうだ、入院に必要なものを彼の部屋に取りに行かなくては。
そっと立ち上がり彼の顔を覗き込む。
すやすやと寝息を立てている彼の顔は戦いに疲れた戦士のような、それでいて満足気にも見えた。
わたしはにっこりと彼に微笑みかけて、そっと病室を後にした。
殺風景な彼の部屋に着くと、タオルや洗面用具などを準備した。
それらを入れる旅行バッグみたいのものはないかしら、と部屋を見渡してふと一つの箱があるのに気が付いた。
少し大きすぎるけど、他にちょうど良いものも見当たらないのでこの箱を使うことにした。
すんなりと蝶番をはずし箱を開けた。
中は空っぽだった。
いや、そうではなかった。
青いカードが一枚挟まっていた。
そう、まるでドラえもんのような色の。
何かしら…?
裏返してみるとそこには、はるか昔の中国の武将のような絵が描かれていた。
「関羽…?」
カードに書かれているその武将の名前を読んでみる。
歴史にはあまり詳しくない。
たしか、古代中国で赤壁の戦いの時に劉備とともに曹操を討った武将ではなかったか?
歴史書ではもっと厳つい顔をしていたような気がしたが、私の手の中にある関羽はとても穏やかな顔をしている。
しばらく眺めていたら、おかしくなって吹き出してしまった。
この関羽の顔は、彼と少し似ている。
そうだ、病院に戻らなくては。
そろそろ彼が目を覚ますころだろう。
カードをバッグにしまい、荷物を箱に入れた。
彼が目を覚ましたら、このカードを見せてあげよう。
きっと微笑んで言うに違いない。
「俺たち、勝ったんだね」、と。
2122年11月23日 世界初のタイムスリップゲームの発売まであと一ヶ月を切った。
もうすぐ、過去は未来のゲームによって簡単に変えることができる存在になるのだ。
開発に携わった私は、彼を使ってゲームのログを取っている。
発売前に死なれるなんて、ありえない。
そして、彼には発売後も私のコマとしてゲームの中で過去と未来を行ったり来たりしてもらうのだ。
永遠に出られない、箱の中で。
文章:カタン王の嫁
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