震災前。
大学生。
チェリーを吸いながら、吉祥寺のフリー雀荘。
何かの腹いせか、背伸びか分かんないけど。
堅気じゃなさそうなシルバーアッシュのおじさんに、
「若いのにこんなとこで遊ぶなんてなあ」
と感心されながら国士無双をアガった。
「ツいてますね」
帰りに、ビールと脂っこいファミチキだけ買って、
少し震えながらテレビをつけて、
どうでもいいニュース。
そんで、寝た。
「打ち筋ってな、人生が出るらしいで」
たまに地元に帰ると、
M君とそのツレと、朝まで、いや、昼まで、
ひたすら麻雀を打っていた。
「暇やな」
「せやな」
日本の大学は、どうかしていると思う。
池袋のzooと、難波のポン太。
アホみたいに通った。
「明日、お前何限から?」
「1と2は自主休講」
「じゃ朝までできるな」
「3限も休もかな」
「じゃ24時間コース?」
へっとへとで、ヤニ臭い。
下宿先に戻ると、ベッドにへばりつくように眠っていた。
そんで夕方に起きて、テレビをつけて、
興味もないワイドショーで経済が動いていた。
震災が起こる。
チェリーが販売停止する。
キャメルを吸い始める。
一度、大阪に帰る。
M君とまた、麻雀を打つ。
「東京大変やな」
「ようわからんけど」
キャメルが販売停止する。
ピースを吸い始める。
「来週また説明会やねん」
「卒論、帰ったら書かな」
手堅い平和系の、両面待ち。
あるいは絵合せのような鳴き対々和。
丸ノ内線、終電何時だっけ。
今。
春節、久々に大阪で麻雀を打った。
M君は、いろいろあってまだ大学生。
スロットで何枚出したとか、
居酒屋で女の子をベロベロに酔わせただとか、
凍った時間がそこに落ちていた。
「リーチ」
M君の牌が曲げられる。
M君の後輩が、次々逃げていく。
ファミチキ、ちょっぴり飽きてきたなあ。
今日は、貝ひもの缶詰がいいなあ。
俺は脂っこい、ピンズの中落ちを引く。
これを捨てるなんて、バカだと思う。
でも、俺、もうバカじゃなくなっちゃった。
近鉄電車って、終電早かったよな…。
俺が眠たいのは、多分、心がタイムスリップしてるから。
「ロン!」
M君がニヤニヤしながら、マルメラを吸っている。
ピンズは、やっぱり当たりだった。
点棒を彼に渡しながら、俺もニヤニヤした。
「絶対危険やん、なんでそんなん捨てたん?」
ごめん、少しだけ、今だけあの時の心を返してください。
結局そっから、国士無双をアガって逆転トップ。
M君がラスを引いた。
「ツいとんな」
「ちゃう、悪魔と契約したんや」
そのまま終電で帰って、プレモルだけ買った。
プシュッ。
春の匂いがする。
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