【マドロミの単語帳】♯12:邪道
…こんな夢を見た。
「先輩の読み、当たりましたね!」
昼休みのスターバックス。
一人で読書をしていると後輩が声をかけてきた。
「すごいですねえ、いいなあ、いいなあ。
何かコツとかあったら教えてほしいなあ…なんて。」
「んん?ああ、春節後のホットワインネタのこと?」
「ええ、そうです、そうです。」
「あれは皆のお蔭だよ。実質僕は何もしてないし…」
「そんなことないですよ!すごいアイデアマンだなあ…って尊敬しちゃいました!」
「うーん、本当にそんなすごいものじゃないんだよね…
聞いたらガッカリしちゃうかもだけど…それでもいい?」
首を傾げる後輩。
「??…しませんってば!」
「OK、実はね、あれ、対象地区のターゲットの呟き拾ったんだよ。
そしたら、”冬にワイン冷やして飲むのがなあ…”ってのが結構多かったんだよね。
「ふんふん。」
「で、さらっと、どのくらいいるかみたら割に合いそうだったので、
提案してみたってわけ。詳しい調査はその後したの。」
「でも、詳しい数字調べるの大変だったんじゃあ…。」
「あれは関連協会からもらったんだよ。私は何もしてないんだ。
普及してくれる僕らは彼らにとっての味方、だからね。」
「でもでも、プロモーションもばっちりでしたよ!」
「あれは、ワインに関する歌の歌詞やドラマの関連シーンから
”好きそうなシチュエーション”や”似合うタレント”を抽出したの。
もちろん、クライアントの好みも加味してね。」
「…。」
「クリエイションという言葉からは程遠いだろう?
この仕事は創造性に溢れているっていうけど、
少なくても僕自身はそうじゃないみたいだからね…
…邪道だって思うかい?」
「…多少。」
「実際、その前に行ったフローズンワインと
今回のホットワイン、邪道だって声、いっぱいあったんだ。」
「…。」
「でもね…、ところで君はそれが好きかい?」
そういって私は後輩が飲んでいるキャラメルマキアートを指さす。
「ええ。」
「でも、それだって所謂コーヒー通からすれば『邪道』なんじゃないのかい?」
「そんなことないですよ!こんなに美味しいですし、現に沢山売れてます!」
「じゃあ、君が嵌っている出汁入りお味噌汁は?本枯節削っちゃう?」
「え、だってあれは便利ですもん。第一、硬い鰹節は高いし、削るの大変ですし…」
「じゃあ、カップめんは?」
「あれはちょっと邪道ですかね…だって健康に悪そうだし、美味しくないし」
「なるほど…じゃあ、健康によくて美味しいのができたら?」
「買っちゃうかも…あっ。」
後輩は何かに気付いたようだった。
「ま、そういうわけで、私は何もしてないんだよ。」
私は紅茶を啜って言った。
…そんな夢を見た。
◆
※単語13:じゃどう【邪道】
正道とは異なるやり方のこと。
正道とはどんなやり方で
それは何時からあって、
その上に自分はいるのだろうか?
◆
(上記はすべてフィクションであり、
特定の人物、団体、単語等とは一切関係ありません。)
文章:U
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