【マドロミの単語帳】♯14:ソーセージ

【マドロミの単語帳】♯14:ソーセージ

…こんな夢を見た。

あごがはずれそうだった。

裸電球が馬鹿みたいにゆらゆらと瞬く。
そんな中に父と兄と私が居たような気がした。

どちらかが私を埃っぽい納屋に放り込んで、
(それは粗大ごみを近所の収集センターの箱に車から投げ込むような気軽さで)
そしてどちらかが”がちゅいん”と出来の悪い変形ロボットみたいな音を立てて、
納屋の扉を閉めた。

裸電球が馬鹿みたいにゆらゆらと瞬く。

髭面の大きな方に鼻を摘まれて、
私は苦しくなって口を開けた。

そして。

そして私は”そうせいじ”を突っ込まれ、
あごがはずれそうだった。

私は馬鹿みたいにひんやりとしたリノリウム製の床に
神様にお祈りをするみたいに膝を折って”そうせいじ”の鞘となった。

トオサンバカリズルイヨ。
ハヤクコッチモテヲウゴカセヨ。

未だ髭も生えそろわぬ小さい方が
下半身から”そうせいじ”を取り出して私に握らせた。

喉の奥を薄気味の悪い線虫が這いずり回っていた。
ぐちゃぐちゃと、ねちょねちょと、いつまでも行ったり来たりしていた。
手の中の”そうせいじ”は真夏のちゃぶ台に置きっぱなしになった納豆みたいに
目が潰れるくらいの臭気と粘り気を放ちながら、ぐんぐんと大きくなった。
やがて片手で収まらなくなったので、
懇願するように両手で握って丹念に擦りあげざるを得なかった。

裸電球が馬鹿みたいにゆらゆらと瞬く。

ぐちゃぐちゃ、ねちょねちょ。
いったりきたり。
ゆらゆら、ゆらゆら。

ぐちゃぐちゃ、ねちょねちょ。
ゆらゆら、ゆらゆら。
いったりきたり。

息が苦しくてあごがはずれそうだった。

あごがはずれそうだった。
あごがはずれそうだった。
あごがはずれそうだった。




はず


うだ。

やがて私の眼球から熱い涎みたいな液体が出て、
ぽたりと音を立てて床を濡らした。

ぽたり。ぽたり。ぽたり。

その音で私は目が覚めた。

「生きなさい。そして行きなさい。」

母親の声が聞こえて、
私の瞳に炎が静かに灯るのが自分でもわかった。

「…。」

私は。

私はがぶり、と”そうせいじ”に喰らいつくと同時に
ぐちゃりと両手を思いっきり握りこんで、それをぼきりべろりと捻じ曲げた。

地獄の
ロードローラーが
ぶっ壊れたような
悲鳴。

私は手に残る安物の熟していないバナナみたいな感触に止めを刺して、
口内で瀕死の魚のようにビクビクと跳ね回る”そうせいじ”を
真っ赤なうすしお味のスープと共に床に吐き捨てた。

それは先程まで床を濡らしていた跡を塗りつぶして
床にびしゃりと真紅の仇花を咲かせた。
口内から打ち捨てられた”そうせいじ”は
そこから伸びる無節操な雄蕊のようだった。

「一輪じゃ、さびしいよね。」

私はふらりと立ち上がると、納屋に立てかけてあった
しっかりとした木製の柄のついた無粋なギザギザの金属塊に手をかけた。

地獄のロードローラーが2台。
”ごうごう”と。
何かをデュエットしていた。

余りにも煩くて耳障りだったので、
私はそれをかき消すように、金属塊でロードローラー共を切り裂いた。

ざくり、ぶしゃり。

デュエットは突然のフィナーレを迎えた。

「…。」

静かになったのを確認して、
私は納屋の扉を開いた。
それは拍子抜けするくらいあっけなく開いた。

ツツジ、タンポポ、コブシ、ナノハナ、ハクモクレン、ハナミズキ。
途端に吹き込む圧倒的な風と香り。

そして流星群のように夜空を埋め尽くす桜吹雪。
桃色の夜空の隙間から大きな月光が降り注いでいた。

私は深呼吸して肺を満たすと、
納屋の裸電球のスイッチを消して、静かに扉を閉めた。

ぱたん。

…そんな夢を見た。

※単語15:そーせーじ【sausage】

”それはソーセージだ”

(どうでもよいことだ、というドイツの言い回し)。

(上記はすべてフィクションであり、
 特定の人物、団体、単語等とは一切関係ありません。)

文章:U

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