【マドロミの単語帳】♯18:ハネムーンサラダ(B01)
…こんな夢を見た。
「ショウダウン!スリーカードだぜ!」
ガタイのよいチャイナが息を荒くして叫ぶ。
「フルハウス。」
それを不敵に笑い飛ばして私はさらりとカードを開く。
「このボードワンペアからスリーカードでオールインとは…」
残念そうに薬屋がため息を吐く。
いつものBARでいつもの面子とテキサスホールデン。
これはそんな夜のことだった。
「じゃあ、罰ゲームだね。何がいいかなあ…」
私は横目で机に突っ伏しているチャイナを眺めながら、
チップを集めて揃えていく。
「じゃあさ、チャイナの恋バナとかどうかな?」
「なっ…。」
「ん?それは何かあった感じですね?」
薬屋の指摘に動揺するチャイナ。
それを見逃す私たちではもちろんない。
(ゲーマーとは各も非情な人種なのだ)
「負けたら何でもいうこと聞くっていったなあ…。」
「そうそう、男に二言は無い!が君のモットーですものね。」
ルールを呟く私と彼の矜持に訴えかける薬屋。
「…わあったよ。別に大したことじゃねえし。」
渋々口を開くチャイナ。
(こうかはばつぐん!である。)
「いやさ、この間、料理覚えたいっていってた子がいただろ?
あの子の所にいったんだけど。」
「!?」「おおお!」
「なんか千切ったレタスがボールに山盛りでさ。
『どうです?』なんていうから中華風ドレッシングかけてやったわけ。」
目を合わせる私と薬屋。
「…?、なんだよ?嫌ならこの話題止めるぜ。」
「いえいえー。」「続けてくださいな。」
「で、一通り教えて帰ってきたんだけど、
なんか途中から機嫌悪そうでさ…ってそんだけ。
…あんだよ。可笑しいのかよ。」
見つめ合って笑いを堪える2人。
「チャイナらしいなあ…。」
「相手が悪かったですね。」
「そういえばあの子、コンパの時
昔のハーレクイン好きだっていったもんなあ…。」
「なるほど、それで古風な感じなのですね。」
「夢見がちな人っているんだなあ…。」
盛り上がる議論(?)に割って入るチャイナ。
「なんだよ、なんだよ、二人だけ訳知り顔かよ。
俺にも教えてくれてもいいんじゃねえの?」
「チャイナは彼女のこと好き?」
「ああ、まあ、嫌いなら教えにいかねえよ。」
「じゃあ、スマホ貸して。」
「…?? ああ。」
スマホをチャイナから借り受けた薬屋は
それを私に投げてよこす。
「じゃあ、お願いしますね…さてと。」
「?」
「レタスだけって言ってましたよね。」
「ああ。」
「しかも、ドレッシングなしの。」
「おお。」
「それって英語だとなんていいます?」
「…?えーと、”lettus only without dressing”…くらいか?」
「そう、それはつまりですね…」
回答をいう薬屋。
それを聞いたチャイナは叫びがら机に突っ伏して。
そして私が積みなおしていたチップが少し揺れた。
◆
※単語19:ハネムーンサラダ【Honeymoon—salad】
レタスのみ、ドレッシング無しのサラダのこと。
古風な英語圏の表現では「食べていいよ(はぁと)」の意。
”lettus only without dressing”は
(ドレッシングなしのレタス)
”let us only without dressing”
(二人だけで裸でいましょ!)
と読めてしまうのからなのだとか。
◆
(上記はすべてフィクションであり、
特定の人物、団体、単語等とは一切関係ありません。)
文章:U
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