Who watch the Watchmen?
(誰がヒーローを見張るのか?)
1986年より連載。2009年にはザックスナイダー監督によって実写映画化も。
全数百ページにわたる長編。途中に挟まれる架空の資料もえげつないボリューム。
ヒューゴー賞など数々の栄誉を勝ち取り、アメコミ史上最も”文学的”とされる作品の一つ。
そしてこう称される。
アメコミを終わらせ、アメコミを再誕させた作品。
作者は前回の”the killing joke”と同じ、鬼才・アランムーア。
やっぱ見た目は世捨て人。
アメコミを批判的に再構築した男。
じゃあ今作、ウォッチメンのあらすじを。
”1985年10月、ニューヨーク市民エドワード・ブレイクが殺害された。ウォルター・コバックス(ロールシャッハ)が、この事件を調査した結果、ブレイクが長年にわたり合衆国政府の特務機関員として活動していたヒーロー、コメディアンであったことが判明。ブレイク殺害はヒーロー狩りの第一段階だという仮説を立てたコバックスは、かつての相棒ダン・ドライバーグ(ナイトオウル二世)、大企業の社長であるエイドリアン・ヴェイト(オジマンディアス)、軍事研究所に暮らすジョン・オスターマン(Dr.マンハッタン)、その恋人であるローレル・ジェーン・ジュスペクツィク(二代目シルクスペクター)ら、他の4人のスーパーヒーローに警告を発してまわり、ブレイクの墓前で報復を誓う。”
要はヒーロー殺しを追うサスペンス。
派手な戦闘シーンなんてほとんどないし、そもそも超能力を持っているわけじゃない。
ヒーローはいわば自警団であり、
それも時代とともに”邪魔者”とされ、遂に条例で自警行為を完全に封じられた、という設定。
冷戦は再び緊張を極め、「the END is nigh」(終末は近い)と掲げたプラカードが街に踊る。
主人公らしい主人公は居らず、群像劇に近いが、とりあえずメインキャラクターとされるのはこいつ。
マスクのヒーロー、ロールシャッハ。
素顔は「the END is nigh」と街宣活動をするホームレス寸前のダメ男。
精神病患者でもあり、時折抑えきれずぶちきれる。
未だに自警活動を勝手に行う、アウトロー。
ナイトオウル2世と、シルクスペクター2世。
バットマンを模しているであろう、ヒーロー。
引退し、普通に生活をしている。
「あのころ、俺たちは輝いていた」
と、慰め合うことで今日も生きている。
親の世代からヒーローだった。
オジマンディアス。
大企業の社長でもあり、その頭脳、そして身体能力は人類最高と呼ばれる。
ヒーロー活動はやめているが、今でも凄まじい活躍。
あらゆる面において間違いなく、最強のヒーローであった。
で、あった。
Dr.マンハッタン。
名前の通り、核兵器を連想させる存在。
事故により、分子レベルで世界のあらゆるものを動かせる能力を身につけた、「この世界唯一の超能力者」。
時空をも超えてしまう。神にも等しい力を得てしまった。
「神は居た。しかも神はアメリカ人だった。」
彼のおかげでベトナム戦争をアメリカは圧倒的に勝利し、
おかげでソ連は焦り、冷戦は核戦争寸前まで追いつめられている。
マジで、世界が終わってしまう。
しかしDr.マンハッタンは、この状況に手助けをしようとしない。
彼は既に、地球自体に興味も失い始め、アメリカの言うことも当然聞かなくなり、全てに無関心になってしまっていたからだ。
そう、それはまるで、「神に見捨てられた」世界…。
最初に殺されたコメディアンは、まさに80年代までの”分かりやすい”アメコミヒーロー像そのものであり、
やがてベトナム戦争に参加することでその暴力性だけが浮かび上がることになった。
ロールシャッハはヒーロー像に固執し、時代との矛盾から崩壊して行くキャラクター。
ナイトオウルらはヒーロー像を捨ててしまい、ノスタルジアに浸ることで今を生きるキャラクター。
オジマンディアスは現代に沿ったヒーロー像を模索し、経済活動を通じて市民の賞賛を得るキャラクター。
Dr.マンハッタンはヒーローから人間性を除去してしまい、もはや神に等しい存在となってしまったキャラクター。
コメディアンを殺したのは一体誰なのか?
そしてどうして殺したのか?
その先にある風景とは?
超絶面白いです。
何度読んでも、毎回何かが見える。
まさに”圧倒的”。
ぜひ!
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