Chess-themed Fiction:I.F.(Isolated ♟ had a friend called ♕)
♯05 Illegal move
◇♟◇
学校の道徳の時間。
僕は彼女のことを思い出した。
「巡礼様 その手にあまり ひどすぎるお仕打ち、
このように 礼儀正しい 信心ぶりですのに。
聖者の手は 巡礼の手が ふれるためのもの、
指ふれるは 巡礼の優美な 口づけと申します。」
「はい、よくできました。それではここまでのお話しを…」
センセイの話なんて聞いちゃいなかった。
指ふれるは優美な口づけ。
彼女が宝箱を開けたときの癖をふと思い出した。
その磁器のように透き通る細い指と
芽吹きたての花びらのような桜色の唇。
宝箱を開けたときの彼女の癖。
柔らかく湿った花唇が開かれ、指を濡らしていく。
彼女はその手でそっと包み込むように兵士達を目覚めさせる。
そして…
「…くん、…君、ほら、次を読んで!」
センセイが大きな声で僕を呼んでいた。
朗読会は僕の番のようだった。
-To be continued-
文章:U
最近のコメント