Chess-themed Fiction:I.F.(Isolated ♟ had a friend called ♕)
♯08 Promotion
「チェックメイト。」
勝負は僕の勝利だった。
「おめでとう。君は強くなったわ。本当に、本当によかった。」
彼女はやはり少し寂しそうな表情を浮かべているように見えた。
「いいわ、キスしてあげる。」
彼女は立ち上がり、ソファーに座ったままの僕の傍まで来て膝をついた。
ちょうど唇が重なる高さだ。
「目を、つぶって。」
彼女の形のいいまつ毛が顔に当たるくらいまで近づいてきて、
やっと僕は目をぎゅっ、とつぶった。
そして。
そして僕はその瞬間を待った。
永遠とも感じる時間を。
「…?」
しかし、その瞬間はこなかった。
何処までも澄んだ冷たい風と燃えるような夕日が僕の唇を彩っただけだった。
その夕焼けの空から降る雪はまだ止んでいない。
彼女は、消えてしまっていた。
そして二度と現れることはなかった。
そして僕はすべてを知ったのだった。
-To be continued-
文章:U
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