【Novel】【Antique/Peppermint】♯Infinity-bazooka:01

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【Novel】【Antique/Peppermint】♯Infinity-bazooka:01

外灘の美術館をまっすぐ行くと、
この時期は建設ラッシュのためのトラックによく出会う。
朝は労働者を、昼は廃材を、そして夜は色々なモノを運んでいく。
そんなトラックが行きかう道を右に曲がった小さな路地。
看板もない汚い螺子屋(それはどう見ても倉庫にしか見えないが)の奥に
それはある。

「薄荷古玩店(Antique store/Peppermint)」

倉庫の入り口から微かに見える安っぽいネオンサインにはそう書いてある。

そこで一人の少年が黒いマグライト(にみえる細い棒)を見ていた。
鉛製だろうか、細長いそれは黒光りしながら自らの重量感を主張していた。
その側面にはキャップの付いたボタンと共に「無限銃」と彫られている。

「10元。」
4元に聞こえる南方のキツイ訛りで奥の老婆が言った。
どうやら店主らしい。

「10元だよ。買うの?買わないの?」
「…これ、本当なの?」

少年は付属していた説明書に目を落としたままでいった。
いつものように晴れの無いこの街。
そんな灰色の空のような髪をした少年だった。

「まあ、見てな。」

老婆はふひひ、と笑って手元から同じような黒い棒を取り出すと
傍に貼ってある”假一罰十”と書いてある張り紙に向けてボタンを押す。
シュッ、と微かな音がして、”十”の文字の所に穴があいた。

「どうだい?見事なもんだろう。」
「…。」

「で、買うのかい?私もそんなに暇じゃあないのよ。」
そういって老婆は傍の大きなフリーザーから
(横長で中が見える蓋が付いている例のヤツだ)
”南北大棒”のマンゴー味を出して齧った。
そしてふひひ、と笑って少年の方を見た。

「…買うよ。はい、10元。」

少年は10元をフリーザーの上に置いて店を出た。
老婆の手はアイスでベタベタしていて、手渡ししようという気にはなれなかった。

「…まいどあり。」

老婆の声と笑い声が後ろから響いた。

-To be continued-
文章:U

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