【Novel】【Antique/Peppermint】♯Infinity-bazooka:03
外灘の美術館をまっすぐ行くと、
この時期は建設ラッシュのためのトラックによく出会う。
騒音と粉塵が引っ切り無しに行きかうそこも週末の早朝だけは静かだ。
その理由を語るものは誰もいないが、
建設現場に無情に、そして無秩序に転がる
”紅星八鍋頭”の酒瓶が雄弁に語ってくれるはずだ。
そんな静かな道を右に曲がった小さな路地。
看板もない汚い螺子屋(それはどう見ても倉庫にしか見えないが)の奥に
それはある。
「薄荷古玩店(Antique store/Peppermint)」
倉庫の入り口から微かに見える安っぽいネオンサインにはそう書いてある。
そこで老婆は”南北大棒”のチョコ味を食べながら、
飛んできた黒い棒をキャッチしていた。
「おう、お前さんかい。なんだ?返品かい?」
「動かなかった。それ。お金返して。」
「残念ながら、それはできないのよねえ。」
ふひひ、と老婆は笑って傍の張り紙を指さした。
張り紙は”十”の部分が丸く無くなっており””假一罰○”と読めた。
「そう、この店は補償はしない主義なのさ。たとえそれが偽物でもね」
ふひひ、と老婆はまた笑ってチョコアイスに噛り付いた。
「…。」
「その代り、アイスならご馳走するよ。
今なら、イチゴと、マンゴーとチョコ、好きなの選ばせてやるよ。どうだい?」
「…。もう、いいよ。」
少年は老婆に背を向けて出ていった。
その顔には傷があった。
老婆はふひひ、と笑ってアイスを一口齧ると、
少年が投げてきた黒い棒にドライバーを当て底部を外した。
そして底部から現れた端子にケーブルをつなぐと、それを傍のパソコンに接続した。
老婆はまた少し笑ってキーボードをたたく。
もうアイスはない。
「さてと。じゃあ、10元分のサービスはしますかね。」
老婆は「上傳」のボタンを押した。
薄荷古玩店。
それは人の重荷を少しだけ軽くするガラクタの店。
…なのかもしれない。
※List01:Infinity-bazooka(無限銃)
マグライトの形をしている。
射程無限、威力無限、
打てばどんな対象も殺すことのできる脅威の銃。
対象は瞬時にクォークレベルまで分解されるので証拠も残らない。
(宇宙の創世時に一度だけに使われたとかなんとか。)
ただしエネルギーチャージ時間も無限。
つまり打てないガラクタ兵器である。
代わりに録画機能を店主がつけた。
ちなみに店主が持っていたのは護身用のレプリカである。
-To be continued?-
文章:U
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